こんにちは、アカナレッジです。
前回の投稿は、「第3章:銘柄選び〈テクニカル分析+需給分析〉」でした。
個別銘柄の選び方の例として、一時的に値下がり率が高くついている銘柄をアプリの検索機能でスクリーニングしました。そして、テクニカル分析と需給分析を組み合わせ、トレンドの転換点を推測し、数値に基づいて定性的に「買い or スルー」を判断しました。
ここまでで、『堅実スイング投資』における株の選び方の姿勢を紹介できたと思います。
今回は、「第4章:買い〈分散投資と株の分類〉」です。
株の選び方を知った上で、実際のところ「銘柄をいくつ・いくら買えばよいのか?」という観点で、
『分散投資』に基づく堅実な姿勢を養っていきたいと思います。
投資の元手が人それぞれなら、
株を買う際の視点も、リスク回避の方法も、人それぞれ。
〈分散投資の基本〉
株価は常に上下するため、特定の1銘柄だけに依存すると大きな損失リスクを伴います。
特定の特定の業種やテーマに偏ると、景気変動や規制リスクに巻き込まれる危険性が高まります。
トレンド分析・テクニカル分析・需給分析どれもとっても、推測に過ぎません。
市場では推測が外れるほどの急な流れの変化が生じることがあり、これが損失リスクの元凶です。
分散投資では、複数の銘柄に資金を振り分けることで、**「片方が下がっても、他方でカバーできる」**という効果が期待できます。これは、投資の世界でよく言われる「卵を一つのカゴに盛るな」という考え方であり、資産防衛の基本戦略です。
そこで、手持ちにする銘柄を分散するための視点を養っていきます。
ここから先は、
1.セクターを割り振る
(景気敏感株・ディフェンシブ株・成長株といった「性質」の違いで分ける。)
2.業種を割り振る
(自動車・食品・ITなど、景気やトレンドに応じて異なる動きをする。)
3.スケールを割り振る
(大型株・中型株・小型株といった「規模」の違いを意識する。)
これらの3つを意識することが望ましいと言えます。
分散投資とは、単に銘柄をバラけさせることではありません。
4-1.セクターを割り振る
「セクター」は 株式市場を大きく産業ごとに分けたカテゴリ のことです。 たとえば世界共通の産業分類基準である GICS(Global Industry Classification Standard) では11のセクターに整理されています。経済全体の動きを大まかに把握するためにグループ化されており、特定のセクター株に特徴的な銘柄の動きを示すため、投資判断に役立ちます。
例:原油価格が上がると、「エネルギーセクター」が上がりやすい
例:金利上昇時は、「金融セクター」が恩恵を受けやすい など。
さらに、セクターは景気との連動性から3つの性質に分けられます。
セクター分散では、これら3種類をバランス良く保有することがポイントになります。
① 景気敏感株(シクリカル株)
特徴:景気に強く反応して上下する
セクター:自動車、機械、半導体、金融、化学、鉄鋼など
イメージ:好景気には業績が一気に伸びるが、不況時は真っ先に落ち込む
② ディフェンシブ株
特徴:景気にあまり左右されず安定している
セクター:食品、医薬品、電力・ガス、水道、通信など
イメージ:不況でも人は「食べる・薬を飲む・電気を使う」ため、売上が安定
③ 成長株
特徴:景気の良し悪しに関係なく、中長期的に成長を期待できる
セクター:IT(クラウド)、バイオ、EV(電気自動車)、新興企業など
イメージ:景気に依存せず「社会の新しい需要」に応じて拡大する
4-2.業種を割り振る
業種の枠組みとして、日本国内では東証の33業種分類が公式です。
「業種」と「セクター」は似ていて混同しやすいです。セクターが上位の分類で、業種がその下位の分類であるため、業種はセクター内の細分化と考えるとよいでしょう。また、セクターは国際基準(GICS)、業種は国内基準(東証分類)と覚えておきましょう。
同じセクターに属していても、業種が違えば株価の動きがまったく異なることがあります。そのため、1つのセクターの中でも業種を分散させることを意識すると、よりリスクを抑えた分散投資が可能になります。
次の表には、性質とセクターと業種をまとめました。
なお、GICSの公式分類ではないが、投資家視点の独自分類となる、テーマ株を含めています。
🔹 株式分類リスト
| 性質分類 | セクター(+テーマ株) | 東証業種 |
|---|---|---|
| 景気敏感株 | 自動車・輸送機 | 自動車、自動車部品 |
| 機械 | 産業機械、精密機械 | |
| 半導体・電子部品 | 半導体製造、電子部品 | |
| 金融 | 銀行、証券、保険 | |
| 化学 | 総合化学、素材化学 | |
| 鉄鋼・非鉄金属 | 鉄鋼、非鉄金属 | |
| 商社 | 総合商社、資源商社 |
| ディフェンシブ株 | 生活必需品 | 食品、飲料 |
| 医薬品・ヘルスケア | 製薬、医療機器 | |
| 公益 | 電力、ガス、水道 | |
| 通信 | NTT、KDDI、ソフトバンク |
| 成長株 | IT・情報通信 | ソフトウェア、クラウド・AI系 |
| バイオ・医療 | バイオベンチャー | |
| EV・次世代自動車 | 電気自動車 | |
| 新興・ベンチャー | 新興上場企業、テーマ株 |
4-3.スケールを割り振る
株のスケールとは、時価総額や株価の安定性の目安になる分類です。大型株、中型株、小型株に分類されます。時価総額が1兆円以上が「大型株」、3000億円~1兆円が「中型株」、3000億円未満が「小型株」です。
🔷大型株
時価総額が大きく、業績も安定。日経平均やTOPIXに連動しやすい。
リスクは小さいが、値上がり益も控えめ。
🔷中・小型株
時価総額が小さく、値動きが大きい。
投機的な動きが出やすく、急上昇・急落の可能性あり。
中小型株は流動性が低く、売買しにくい場合がある。
大型株だけに偏ると、リターンは安定しますが、大きな利益は望みにくくなります。一方で、中小型株は流動性が低く、売買しにくい場合があります。分散投資の観点では、大型株で安定を確保しつつ、中・小型株で成長・リターンを狙うイメージです。
理想的には、大・中・小の株をバランスよく割り振ることが望ましいですが、元手となる投資資金には限りがあるため、資金規模に応じてバランスを調整する必要があります。
株価だけでは時価総額を判断できませんが、ここでは便宜的に株価帯のみで、投資金額ベースのポートフォリオを組んでみます。
🔷元手200万円のポートフォリオイメージ
| 株価帯 | 株数 | 投資金額 |
|---|---|---|
| 10,000円台 | 1銘柄×100株 | 約100万円 |
| 1,000円台 | 2銘柄×100株 | 約70万円 |
| 数百円台 | 3銘柄×100株 | 約30万円 |
あくまでも 株価帯によるスケール分散はイメージ です。
実際の銘柄選びは、テクニカル分析や需給分析の結果に基づきます。
自信のある銘柄については、株数を増やすなどして柔軟に調整することが可能です。
〈まとめ〉
ここまで、分散投資における3つの分類視点について解説しました。
しかし、分散投資によるリスク回避はあくまで「期待値」であり、実際に損失を完全に防げる保証はありません。また、3つの視点をすべて適用しようとすると、どうしてもダブりや矛盾が生じます。
さらに、テクニカル分析や需給分析をもとに銘柄を選んでいくと、結果的に同じ業種や同じセクターに偏ってしまうことも少なくありません。
ですから、分散投資をあまり厳密に考えすぎる必要はありません。
『堅実スイング投資』において重要なのは、自分のポートフォリオを把握していることです。
保有銘柄ごとの投資金額、スケール・業種・セクターなどの構成をを把握していれば、買い・売りのタイミングを判断しやすくなります。
したがって、『堅実スイング投資』で実践することは次の3つです:
実際にできること
1.セクターの割り振りを把握する (景気敏感・守り・成長のバランスはどうか)
2.業種を割り振りを把握する (自動車・食品・ITなど、どこに偏っているか)
3.スケールの割り振りを把握する (大型株・中小型株の構成を確認する)
これらを定期的に見直すと、持ち株(資産)の値動きの波が予測しやすくなります。
スイング投資の”スイング”は、チャートの揺れ(=値動き)の意味でした。
もう1つ強調しておきたいのは、分散投資は「買う前に綿密に設計するもの」ではない ということです。ただでさえ、テクニカル分析や需給分析に時間をかけて買いのタイミングを計るのに、そこへ分散の視点まで同時に持ち込むと判断が複雑になりすぎます。
むしろ現実的なのは、買った後に自分の保有銘柄を一覧にして、4つの項目(資金・業種・セクター・スケール)をチェックすること です。偏りが見つかれば、そこから調整すれば十分です。
損失を避ける最大の方法は、「損失が大きくなる前に売ること」です。
自分が一度買った銘柄を把握しないまま放置してしまえば、リスクの所在も分からず、損失回避は困難になるでしょう。
ーおわりに
ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、分散投資の基準となる視点について3つ紹介しました。
株を買う作業だけでなく、株の性質を知るということが重要で、リスクを回避して堅実に利益を重ねていくためには必要な実務であることを強調しておきたいと思います。
現在、朝の5時半です。
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次回は、第5章:待ちの判断〈タイミングを探る〉を予定しています。お楽しみに。





